会社を立ち上げたばかりの創業者にとって、税理士選びは最初に直面する大きな判断のひとつです。
しかし「とりあえず近いところで…」「安ければいいか」と軽く考えてしまうと、後々取り返しのつかない事態につながることも少なくありません。
実は、創業期だからこそ税理士の選び方には慎重さが求められます。
このコラムでは、創業時にありがちな「税理士選びでやってはいけない5つの失敗」と、それを避けるための具体的なポイントをわかりやすく解説します。
失敗1:料金の安さだけで選んでしまう
創業時はとにかく資金に余裕がないため、税理士の顧問料や申告料が「安いかどうか」ばかりに目がいきがちです。
もちろん費用を抑えることは重要ですが、料金の安さだけで判断するのは非常に危険です。
安価な税理士には以下のようなリスクが伴います。
- サポート範囲が限定的で、結局オプション料金がかかる
- 創業支援に慣れておらず、助成金や融資のアドバイスが受けられない
- 担当者の対応が遅く、申告期限ギリギリになる
- 節税の提案がほとんどなく、税額が高くなる
結果的に「安かろう悪かろう」で、高くつく可能性もあります。
費用の安さだけでなく、サービス内容や相談のしやすさ、対応スピードなどトータルバランスで判断することが大切です。
失敗2:創業支援の実績がない税理士を選んでしまう
税理士には得意分野があります。
中には相続や資産税、医療法人専門など、創業支援とは縁の薄い分野をメインにしている人もいます。
創業期は、経理や税務の基礎だけでなく、
- 開業届や青色申告承認申請書の提出
- 法人口座の開設や資本金の取り扱い
- 日本政策金融公庫などの創業融資サポート
- 補助金・助成金の申請
- 会計ソフトの選定と導入支援
- 初年度の資金繰りや節税のアドバイス
といった「開業特有の手続き・課題」に直面します。
この領域に不慣れな税理士では、相談しても的を射た答えが返ってこないことも。
創業支援の実績が豊富な税理士を選ぶことが、事業の立ち上がりを大きく左右します。
失敗3:レスポンスが遅い/相談しづらい税理士と契約してしまう
創業時は日々わからないことだらけ。
「これって経費にしていいの?」「この書類どう出すの?」といった小さな疑問が次々に出てきます。
このとき、税理士がなかなか返事をくれなかったり、毎回電話しないといけないような相談のしづらい雰囲気があると、非常にストレスになります。
結果、質問できないままミスを重ねたり、期限を逃したりしてしまうケースも。
創業期においては、気軽に相談できてレスポンスが早い税理士が圧倒的に有利です。
契約前には次のような点をチェックしましょう。
- メール・チャットなどで質問できるか
- 平日以外の対応可否(緊急対応など)
- 担当者の人柄や対応スタンス
- 初回面談での説明が丁寧かどうか
税理士との信頼関係は、創業期の心強い支えになります。
不安や悩みを遠慮なく話せるパートナーかどうかを見極めましょう。
失敗4:クラウド会計に対応していない税理士を選んでしまう
最近では、freee(フリー)やマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトが主流になっています。
特に創業期は業務効率を上げるためにも、クラウド会計の導入が大きな助けとなります。
ところが一部の税理士では、今でも紙ベースやExcel中心の対応で、クラウド会計に不慣れ・非対応なケースがあります。
この場合、以下のようなデメリットが生じます。
- 自分で入力しても、税理士がソフトを使いこなせず確認できない
- データ共有がうまくいかない
- 無駄にやり取りが増える
- 作業の二重化、時間のロス
クラウド会計は、経営者と税理士が同じ画面をリアルタイムで共有できるという大きな利点があります。
そのメリットを活かすためにも、クラウド会計に精通している税理士を選ぶことが大切です。
失敗5:契約内容を確認せずに勢いで決めてしまう
最後に意外と多いのが「勢いで契約してしまう」という失敗です。
- 紹介されたからなんとなく
- 話してみたら良さそうだったので即決
- 初回面談の場でそのまま契約書にサイン
こうしたケースでは、あとから「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりがちです。
特に注意したいのは以下の点です。
- 顧問料に含まれる範囲(記帳代行、年末調整、決算料は別途?)
- 毎月のやり取りの頻度・方法
- 解約のルール(最低契約期間・違約金の有無)
- 担当者が税理士本人かスタッフか
一度契約すると、途中で税理士を変えるのは簡単ではありません。
初回の面談後は、必ず一度持ち帰って契約内容をじっくり確認する時間を取りましょう。
まとめ:創業期だからこそ、税理士選びは“慎重に”
創業時の税理士選びで失敗すると、後々の会計処理や資金繰り、さらには税務署対応まで影響が及びます。
そして最も重要なのは、税理士との信頼関係が崩れると経営者が孤独になるという点です。
創業期のパートナーとしてふさわしい税理士を見つけるには、
- 実績や得意分野を確認する
- 対応スタンスや相談のしやすさを見る
- サービス内容や契約範囲を明確にする
といった“相性”と“実務力”の両面をしっかり見極めることが必要です。
税理士は「申告のために必要な人」ではなく、経営のスタートを支える大切な味方。
後悔しない選び方をして、事業を安心して軌道に乗せていきましょう。